ツインリンクもてぎ100kmサイクルマラソン その2

  • 戦い終わって

その日の正午過ぎ、僕は高速道路上を家に向って快調に走行していた。レースは無事終了したのだ。初心者にしては出来すぎな、本当に楽しく良いレースだった。

レース直後に張り出されたリザルトでは、僕の登録したカテゴリ(年齢別だ!)の中で順位は114人中15位。タイムは2時間45分47秒。トップとのタイム差は14分27秒。本当に信じられない程出来すぎな結果だった。車のハンドルを握りながら、ラスト一周の壮絶なバトルを思い出す。


その一周、最後の登りに差し掛かったあたりで、そろそろ仲間意識まで芽生え始めた列車に異変が起きた。一名がぐんと飛び出し、急速に車列が乱れる。
アタックだ!
何人かが追いかけようと飛び出し、僕も遅れじとペダルを踏みつける。コース上は速度域の違うレーサーが何人も走っていて、まるで障害物レースのようだ。どの自転車乗りの顔にも余裕は見られない。歯を食いしばって、うつむきながらもペダルを踏んでいる。もう終わりも近い。みんな必死なんだ。でも必死だからこそ得られる喜びがここにある。これはレース。順位が、タイムがあるのだ。
より高みを目指して走るこのマゾヒズム喜びは走ったものでなければわからない。

僕の視界の先で、先ほどアタックした彼が急速に失速する。彼もまた限界だったようだ。僕だってもう限界近い。いやひょっとしてもう超えているのかも。さっきから左ひざが異様に痛い。100kmなんて日々走っているはずなのにこんな経験は初めてだ。レーススピードの反動なのか。ギリギリのところで力を振り絞り、足に集中しクランクを回す。
さあ、コースは最後の下り坂だ。50km/hで駆け下りると、後は最後のヘアピンを抜けダンシングでゴールラインに飛び込むだけだ。
もう周りの人は見えない。これは自分との戦いだ。あと1秒タイムを縮めるために歯を食いしばってペダルを踏む。
最後の数十メートルの無酸素運動を潜り抜けて、そして僕はゴールした。


ヘロヘロになってピット裏に戻ると、恐るべき早さで速報が張り出されていた。僕の名前もある。公式リザルトでは、タイムは2時間45分27秒だった。あれ?たしかサイコンでは2時間54分だ。こんなに差が出るものなのかな。少し気になってケイデンス表示に固定していたサイコンを距離表示に切り替えてみる。
104.61km
・・・どうやら僕は一周多く走ってしまったようだ。
速度域が違う人間がたくさん走っているので、正直ゴールラインに表示されている残りラップ数はあてにならない。僕自身、トップ集団には周回遅れにされてしまっている。一応距離には気をつけて走っていたつもりだったんだけれど。ラスト一周のあの努力っていったい・・・。


僕は、速報の周りに集まった人垣の、たぶん誰にもわからない理由でくすりと笑い
そしてツインリンクもてぎを後にした。


■公式リザルト(速報)
15位/114人中
100km(21週)
2h45m47s(+13m35s from top)
36.47km/h

■サイコン上の記録
104.61km(22週)
2h54m43s
85rpm
35.9km/h


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