42日ぶりの自転車通勤(前編)

AM3:00。
セットしたアラームが鳴り出した携帯を、布団からにゅっと伸ばした手でひっつかみ手探りで止める。隣では相方と娘がイビキまじりの寝息をたてている。朝型な僕といえどさすがにまだ寝ていたいと数瞬思うが、今起きなければ次に目を開けるのは一時間後だと、えいっと布団から身を引き剥がす。


寒い。
ものすごく寒い。
今すぐ布団に戻りたくなる程寒い。


でもそれは駄目だ。今日は特別な日。一ヶ月以上ぶりに自転車通勤をする日なのだ。
一月の間に季節はすっかり冬になった。事故に会った日、僕は指切りグローブをしていたが、もうすっかりフルフィンガーの、しかもごっついグローブが必要な寒さだ。
押入れからゴソゴソと冬装備を引っ張り出す。


昨日確認した天気予報では、風も穏やかな暖かい一日になるとのことだったが、窓の外は極寒だ。窓ガラス越しにすら冷気が部屋に忍び込んでくる。
昨年、一昨年と僕はこの気候の中を自転車通勤していたはず・・・だ。今の僕にはちょっと信じられない。満員な電車通勤は苦痛だが、少なくとも寒さで凍えることはない。


あれ、シューズカバーがないな。
うーん、ウィンドブレーカーのチャックが閉じないぞ。


走らない理由があとからどんどん出てくる。
こんな寒い日に自転車通勤をはじめる必要はない。もっと穏やかな日を待ったっていいじゃないか。

でも、と考える。
今日走らなければ、次に走るのは4月かもしれない。暖かくなるまで、同じ葛藤を毎朝繰り返すかもしれない。
寒いといったって、今はまだ12月。冬の底はまだ先だ。去年も一昨年もその底ですら無事くぐり抜けているじゃないか。


覚悟を決めるまで結局1時間かかった。シューズカバーは靴下の重ね履きで代用。ウィンドブレーカーはチャックの代わりにクリップで止める。

恰好はダサいが妙に自分ぽくてクスリと笑う。そうだよ、これが僕なんだ。
電車通勤しながらどっかに無くしかけた、小心者のくせに人目を気にしないゴーイングマイウェイな自分だ。 仕上げに自転車通勤する僕を取り戻そう。


僕を乗せてたくさん走ってくれたKLEINの後を継いで、数日前から玄関先で出番を待ち構えていたオルカを、まだ朝というには闇が濃い空の下に運び出す。 寒い。でも大丈夫。耐えられないほどではない。


フロアポンプをセットし120psiまで空気圧をあげる。
軽く車体を持ち上げて落とし、がたつき音がない事を確認する。
ブレーキレバーを握り、確実にホイールがロックされる事を確認する。


久々の、でも体が覚えている儀式を行った後、僕は50kmの彼方から会社に向かって漕ぎ出した。

(つづく)



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