2010 もてぎ 100km サイクルマラソン−登れなかった表彰台(2)

まだ薄闇が世界を支配している中、多少迷いつつもツインリンクもてぎにたどり着く。
晴れではあるけれど、気温は極寒。シューズカバーを忘れた自分を恨む。


とにもかくにもまず試走して体を温めねばと、そそくさと準備し、長蛇の列の受付(実は、受付とは関係ないアミノバリューをもらえるアンケートで混雑していたという・・・)を済ませる。

並んでいる最中にネロさんらしき人を見かけたが、カップルでの参戦のようで声をかけるのは見送り、遠くから祝福するだけにした。新年そうそう実にめでたい。


震えながら自転車を組み立て、徐々に昇る朝日に照らされつつあるコース上へ出る。寒い。手足がしびれる程寒い。日が差したとはいえ、コースが解凍されるのはもう少し先のようだ。ギアを落し、90rpm程度でくるくる回しながらいくつかのカーブを抜け、思い出の上り坂に差し掛かる。
はっきり言って、これが坂?という程度の勾配。いつ始まったかわからない内に始まり、気合を入れる前に終わっている。でも僕は知っている。この坂がボディーブローのように足を削り、気がつけばハムストリングを痙攣に追い込むのだ。特に11月時点の僕と比較しても自転車1台分の脂肪を背負っている今日は調子に乗らないよう注意せねばならない。


坂を登り終えると一気に下り。
下りの手前でブロガー魂を見せてやるぜ!とグローブを脱ぎ感覚が無くなりかけている手でカメラのシャッターを切っていると、hide107さんに声をかけて頂いた。わざわざありがとうございます。


震えながら下るときついS字が待ち構えている。これを抜ければワンラップ終了だ。昨年はこの下りでどうにか足を回復させながら集団についていったんだっけ。こうして記憶とコースを照合させる作業を終え、僕はコースを降りた。
ひとつ忘れていたのだが、晴れていようがこのコースを走る事で温まることを期待してはいけない。試走時間は極寒なのだ。温まりたいなら車の中に引きこもっていた方がまだマシだった。


しばらく待つとスタートラインにバイクが並び始める。あわてて僕も車を飛び出す。足が弱っているとはいえ、いや弱っているからこそ前に並ぶべきだ。一度走り出せば嫌でも順位は下がっていく。
たぶん先頭から10列目くらいを確保。結構隙間があり、前に行こうとすれば行けたが今の実力を考えると厚かましい気がしてやめた。例年どおり20分程コース上で震えながら待つ。
ロードレースの楽しみのひとつは、普段はお目にかかれない高級車を山ほど眺められる事だ。今年もいるいる、TIME RXRにLOOK 595にPINARELLO PRINCE。ZIPPにBORAにFULCRUM。おっとよだれが。喉から手が出ないように注意せねばならない。

少し振り返ると視界の端までヘルメットで埋め尽くされていた。今年も大盛況だ。


ビブのタイツがほしいなぁなんて思いながら、ちょっと緩めで気を抜くと腰からずり落ちそうになる冬用タイツをひっぱりあげていると、
「Blog見てます」
なんて声をかけて頂いた。赤面しつつありがとうございます、と答える。そういえば駐車場でも見知らぬ方に声をかけて頂いた。悪条件が重なっているとはいえ、あまりにヘッポコな結果だと読者をやめちゃうかもしれない。頑張らねば。と変な方向に気合が入る。


一通り招待選手の挨拶が終わり、いよいよスタート1分前・・・30秒前・・・右足のクリートをパキンとはめる・・・10秒前・・・スタート。


ローリングスタートなためか、淡々とスタートする。僕はマスドレースはこれしか経験がないため、他がどうなのかは知らない。早速先頭から100番か200番台くらいに転落する。昨年はローリングスタート中も貪欲に前へ前へと進んで行ったが、今年はただただ落車に巻き込まれませんようにと、ひたすら安全第一で走る。
ところが緊張の一周が過ぎても先頭のバイク誘導が外れない。どうやら2周目もローリングのようだ。密集して走る距離が長くなるのは危険な気がするのだけれど、どうなんだろう?ともかくなんとか2周目も無事に走りきることができた。


3周目いよいよペースが上がる。だけれど記憶にあるほど強烈なペースアップとは感じない。ところがメーターに視線を落とすと時々50km/h程度出ている。50km/hと言えば僕にとってはスプリントの領域。普段ならトレインに乗っていてもいつ振り落とされるかわからない速度だ。しかし体感的にはオンザロードの練習会で40km/hのトレインに乗っている程度。足は去年より確実に落ちているはずなのに、これほど楽に感じるのは、きっと大集団と、機材の力なんだろうと思う。
ポジションが変わっていないのにフレームの違いで高速巡航が楽になるとは思えない。そういえば去年はディープリムを履いていなかったことに思い当たる。すごいぞアイオロス。平坦の高速巡行には欠かせないアイテムだと再認識する。
そして大集団。前走者にベタ付きしなくても十分に恩恵を受けられる。大きな大きな気流のうねりの中に自分が包まれている事を実感する。ひょっとしてこれならいけるかもしれない。
今回の目標は、「最後まで先頭集団についていく事」が目的だった前回から一段下がり、「できる限り先頭集団についていく事」だ。それもできれば前回と同じ程度。能力が下がっている現状でこの目標を達するには、できる限り省エネ走行に徹せねばならない。
急な加速、減速の禁止。足が余っていると思っても無理に前に出ない。先頭を引くなどもっての他。まあ大集団の後方に近い位置では、引こうにも引けないんだけれど。


こうして淡々と大集団の中で5周、10周とラップを重ねる。
ローリングスタート中よりも随分密度は下がったとはいえ、大集団には変わりない。カーブはとても気を遣う。特に下った後の高速カーブ。カーブ突入前にちらりと振り返り後続とのスペースを確認し、ひたすらに前走者のラインをキープしつつ、誰もラインに入ってくるな念じながらカーブに突入する。僕レベルでは、前輪がハスろうものなら即落車だ。ひたすら安全に、安全にとレースを続ける。


今回落車を見かけたのは三度。ものすごい自転車の断末魔のような衝突音。やはりマスドレースは怖いかもしれない。これを避けるにはひたすら前で走るしかないけれど、そんな足がない僕は恐怖に怯えながら集団後方で走りつづけた。


なんというか、これはサバイバルだな、と思う。ほんの少し集団が生み出す気流から離れても、足が無くなっても、落車しても、そこでゲームは終わり。最後まで生き延びた者が勝利を掴めるのだ。


やがて15周を越え、どうも今年のレース運びと前年のそれが違うことに気づきはじめる。なんとなくゆっくりなのだ。加速するポイントがあっても長くは続かず、すぐペダルを止めるポイントがやって来て足を休められる。確か去年はもうそろそろ足が攣っていたはず。今年はまだまだ余裕がある。鼻歌を歌える程だ。いやひょっとして去年の僕はがむしゃらすぎたのかもしれない。思えば去年は上り坂がくる度に、集団の前へ前へ行こうとしていた。今回は集団のペースに合わせゆっくりと登る。このペースなら休息的ダンシングで登れるので、平坦で使った筋肉を回復できる。実に好都合だ。
そして後から知ったことなんだけれど、どうやら鬼のように速い人達は少人数の逃げを作り先に行ってしまったらしい事も一因にあるんじゃないかと思う。
僕自身、この一年で腹を使ったペダリングが出来るようになった事が大きいのかもしれない。腹筋に力を入れて体幹を固定し、足はひたすら脱力してケイデンスをあげる。太ももに力を入れてもペダルは速く回らないのだ。失った力の代わりに蓄積してきた経験が僕を集団内に留まらせている。


様々な要素が絡み合い、奇跡が起きつつあった。


(つづく)




自転車部門で21位

にほんブログ村 自転車ブログへ自転車通勤部門で5位ロードバイク部門で24位

長くてすみません。結果をご存知の方、コメントはもうしばらくお待ちを!m(_ _)m
励みにしていますので、上のバナーをポチ!お願いします。