2010 もてぎ 100km サイクルマラソン−登れなかった表彰台(3)

ついに集団はラスト周回に突入する。ペースは相変わらず。
逃げにそう何人も同クラスの方が居るとは思えないし、ひょっとして今年も入賞できるんではないか・・・と欲が出る。そうなるとこの集団後方の位置は都合が悪い。せめて先頭から2,30番手へと、無理はしないように、でもじわじわと上がる。数人、同クラスのゼッケンが前方に見える。ライバルだ。

みんなゴールスプリントを狙っているのか。経験も足もない僕にスプリントで勝機はない。万が一あるとすれば登りとその後の下りだ。ここでは僕の体重が味方し、楽に僕のトップギアである53×12Tが回りきってしまう程の速度を得る事ができる。


いよいよ登りだ。
呼吸良し。足良し。有り余る程に売れ残っている。ここで売らなくてどこで売る。初めて積極的に前に出る。とはいえ結構コース上はラップ数の異なる参加者で混雑していて思ったようなラインはとれない。それでも最初の登りを抜けカーブを曲がりヘアピンカーブ手前の最後の登りに差し掛かった時、前が開けた。


ここしかない、と思った。


必死にペダルに体重を乗せダンシングする。ピキーンと左側ふくらはぎに攣りの兆候が現れる。ついに来たか、でももう遅い。このタイミングなら最後まで持つ!
僕の前を走る人達が徐々に減っていく。3人、2人、1人・・・坂を登りきり、下りに差し掛かろうという頃


僕はついに集団の先頭を引いていた。


こんな事があっていいのか?そんな瞬間だった。


が、もちろんそんな瞬間は長くは続かない。続く僕に有利なはずの下り坂で右から左からガンガン抜かれた。僕はその流れに乗れない。速度が足りないのだ。経験、いやこれが地力の差か。気がついた時には下りの終わりに達し、一気にS字カーブを右側、左側へと旋回する。
もうなるようになれ!と思いながらペダルを踏みつける。ゴールラインはどこだ。僕は今一体何位なんだ。同じクラスのゼッケンがひとつ僕を追い越していく。


ダメだ、あの人には届かない。スピードが乗らない。足が回らない。早くゴールよ来てくれ。でないともっと抜かれてしまう。


そして、僕はハンドルの上に祈るように伏せながらゴールラインを越えた。



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ゴール後、一緒に走った人達はほとんどそのままクールダウンにコースに流れていった。僕もその一人だ。僕を鮮やかにパスして行った方が前方に見える。思わず声をかけてしまった。
笑顔が爽やかなその方は、聞けば途中で落車に巻き込まれ、そこから復帰を果たしたとの事。これは完敗だ、と思った。僕には例え万全の状態であったとしても絶対無理な技だ。
その方の仲間の方が居て、どうやら僕等が1位、2位らしいと教えてくれた。
(実際速報でも1位、2位だったが正式な発表では2位、3位となっていた。トップの方に計測ミスがあったということか?)


え?・・・と思う。こんな状態で2位(本当は3位)なんて。
本当はくやしいと思うべきなのかもしれないけれど、まったくそんな事は思わなかった。それよりも、表彰台に登れない人間がトップじゃなくて良かったと、変な安堵があった。

今まで参加したレースの事や、このレースの感想を言い合ったりしながら一周走ることができた。とても素晴らしい経験だった。こんな事があるから自転車はやめられない。


ピットレーンに着き、その方と別れ即座に速報が張り出されている場所に直行する。

幻となった2位のリザルト


確かに2位だ。それも去年より4分ほど速い。嬉しさが込み上げるが、それをぐっとこらえ、大会関係者の方に、事情があって表彰式に出られないこと、なんとか表彰状を自宅に送ってもらえないか相談した。結果、賞品こそ送れないものの、表彰状は送って頂ける事を快く了承頂いた。本当にありがたいことだ。
もう僕の人生で何度あるのかわからない表彰台に登れる機会を失うのは本当に残念だが、家では病気の娘が待っている。


僕はもう一度速報を振り返り、そこに確かに奇跡が起きている事を目に焼き付けて、そしてツインリンクもてぎを後にした。



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2010年 ツインリンクもてぎ 100km サイクルマラソン リザルト
タイム :2h30m44.345s
平均時速:40.12 km/h
順位  :男子Cクラス 3位 / 147人中


機材



補給は、500mlの水にCCD一袋とBCAA+クエン酸を半分程。緩やかなレース展開のためか結局半分も飲まなかった。
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自転車部門で18位

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