ツールドつくば2010参戦記その1

数ヶ月程前。
PCの前に座った僕は迷いに迷ったあげく、2010年のツールドつくばは、エキスパートクラスにエントリーすることにした。


どう考えても正気の沙汰ではない。だいたいにおいてエキスパートクラスにエントリーする人達は名が知れている。エントリーリストを眺めただけでピンとくる。憧れの・・・とか、同じ人間とは思えない・・・とか、伝説のスーパーサ○ヤ人・・・とか、そういう枕詞が付く人達だ。同じホビーレーサーとはいえ、雲の上の人達だ。


が、僕はエントリーしてしまった。
だってしょうがないじゃない。昨年なんかの間違いとはいえクラス優勝してしまったんだもの。僕はそれをエキスパートクラスへエントリーするための切符と捉えた。いくしかない。今しかない。こんな機会は他にない。


ちなみに、昨年同様、39才以下のクラスにエントリーして、ダメダメな結果をさらすより、エキスパートクラスで玉砕した方が、同じ負け戦でも美しかろうという胸算用もあった。世間はチャレンジャーに優しい。この辺は年の功と言えるかもしれない。悪い意味で。まあ、人目を気にしすぎなだけなんだけれども。






そして当日。午前6時。僕は自転車をひっくり返し、後輪のパンク修理をしていた。


こ、こんな時に・・・!
間に合うのか!?


だいたいにおいて出発時間がナメすぎていた。
開会式の会場である、市民ホールつくばねまでは約40km。自走で約1時間半。長すぎず短すぎずヒルクライムのアップにはほぼ理想的な距離だ。
僕は多少余裕を見て5時に家を出ようと考えていた。が、それは考えていただけだった。本当にその気があったのなら前日中に準備を完了しているはずだ。


当日の起床時間は4時。1時間もあれば余裕と思われた準備はしかし、出発予定時刻になっても終わっていなかった。その時、僕はあせりながらジャージにゼッケンをピン止めしていた。
ゼッケンは右脇腹に横に、つまりハンドルバーに伏せた時に正しく見えるよう止める必要があったが、鏡を見ると上下逆だった。


なんてこった・・・


絶望的になりながら、僕は時計を睨んで直さない事を決断した。番号は「3」。もし6や9なら致命的な問題になりかねないが、3をひっくり返したところでε。そんなアラビア数字は存在しない。よもや他の人のゼッケンと間違えられることはあるまい。

仕上げに必要と思われるものを全部ウェストバックに放り込んで玄関を出た。雨が降った時用にウィンドブレーカーを持って行きたかったが見つからなかったので諦めた。とにかくギリギリだった。いや本当は全力で飛ばせばまだ十分間に合う時間ではあったが、レース前に40km全力TTというのはどうしても避けたかったし、避けるべき事だった。


まだ、大丈夫。
僕は自分を落ち着かせながら開会式会場へと急ぎすぎないように急いでいた。


そこでパンク、である。


終わった・・・


一瞬そう考えて、いやまだ終わっていないと考え直す。


幸か不幸か僕はパンクに慣れている。とにかく速攻でチューブを交換した。チューブを抜いた後、タイヤを指で撫でさすると、裏側に極細の刺、金属か植物かはっきりしないけれど、が突き出ているのを発見した。これはどちらかというといいニュースだった。なぜか僕のパンクは原因不明が多い。今回も原因不明だと、最悪レース中に再度パンクする可能性がある。僕は若干震える指でパンクの原因を取り除くと新しいチューブを入れ、CO2ボンベで空気を入れた。
パンク修理にかかった時間は約15分。はっきり言ってかかりすぎだった。普段なら10分もかからない。状況が焦りを生み、焦りが作業を遅らせたのだろう。
もう、とにかくギリギリ中のギリギリだった。


まだ間に合うはずだ。時計はギリギリ・・・ひょっとしてもうロスタイムに突入していたが僕は決断し、下ハンを握って子貝川CRを北上した。


練習会のゴールである豊里の市役所を通り過ぎ、工業団地に入る。あと20分程度か。残り時間も20分になっている。しばらく行くと目の前に先を急ぐ1台のローディ発見。声をかけるとやはりツールドつくばに急ぐ方だった。これ幸いとローテしつつ急ぐ事を提案するものの路面はウェット。真後ろにはつき辛い状況だ。残念ながら一人で走るのとあまり変わらない。


さらにあと10分程行くと、急に道にローディが増えてきた。軽装なところを見ると荷物を既に預けアップ中か。間に合うかも。間に合わなければ荷物を背負ったままつくば山を登らねばならない。間に合え・・間に合え・・と念じつつ開会式会場へ滑り込むと、ちょうど荷物預かりの締切りアナウンスをしていた。


「えーー、そろそろーー、荷物預かりを締め切りますーーーー」



しめきるなーーーー!
しめきらないでーーー!!!



その時僕は、つくば山頂のつつじヶ丘駐車場に設置されたゴールに飛び込む時より必死こいた形相だったという。


[つづく]




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