ツールドつくば参戦記その2

不動峠
僕等の茨城県に存在する貴重な峠。全長4km程のショートコースにも関わらずなぜか知名度は異様に高い。


その証拠にパワー計算ができるドイツのサイト2peak.comではたった2本しか選出されていない日本の峠の一本に選ばれている。つまり知名度は全国区どころか全世界レベルと言える。すごいぞ不動峠。かっこいいぞつくば山。
(ちなみにもう一本は大観山。イマイチ選出の基準は謎である。)


そんな不動峠を、僕はぜいぜいと息を切らせながら登っていた。僕の前には5人程がトレインを形成している。その中にはCBのよっしーさんや、Forzaの武井さん、竹芝サイクルレーシングのミポさん等、まさにスーパ○イヤ人レベルの選手が居る。こんなところに戦闘力5のゴミが居ていいのか定かではないが、とにかく着いていけるだけは食らいつこうと必死にペダルを回していた。


後ろからスーパーサイヤ人達の走りを見ているとわかるんだが、とにかくめちゃくちゃウェストが細い。そしてペダルを回すふくらはぎにはクッキリと筋肉が浮かび上がっている。足を構成する筋肉一つ一つの細かい形が分かるほど浮かび上がっていて、なんというか彫刻みたいだ。かっこよすぎる。余分な脂肪がほとんどないとこうなるのだろう。
あれが目標なのだ。 僕も一般人としては太ってはいないほうだと思うが、坂道を登るローディとしては明らかに不格好だ。太りすぎだ。痩せなきゃ・・・。
自分のぷにぷにと脂肪にまみれた足を隠したい衝動にかられつつも、さらに観察を続ける。そのために僕はこの場所に残っているのだ。


圧倒的に走りが軽い。全然余裕に見える。上半身がほとんどブレていない。誰かがアタックしても着いていけるようマージンをとっているのだろう。
こっちは限界ギリギリでゲロ吐きそうになりながら着いていっているというのに、だ。


さすがすぎる。


しばらく行くとForzaのもう一人の方が遅れ出した。
ウギャーと思いながら、その方をパスし、なんとかトレインにしがみつく。
が、僕自身もとうに限界だったようでついに特急列車からこぼれ落ちた。その後はもうあっという間で、みるみるスーパーサイヤ人達は小さくなっていった。
時計を見ると、不動峠の入り口から約5分。ほぼ半ばという事になる。残念だがこれが僕の実力ということだ。


前にも後ろにも人がいなくなる。モチベーションが下がってくる。やばい、と思った。
このままでは、今までの努力も無意味になるほど崩れそうだ。そんな時前方のつづら折の路肩に立つ歩哨の女の子が目に止まった。大学生だろうか。


とたんに力強くペダルを踏み出す自分が居た。バカだ・・・我ながらバカだ・・・。
しかしバカなのは男の性。かわいい子の前で思わず頑張ってしまうのは、最近の若者はなっとらん!といつの時代でも語られているのと同様に何千年も変わらない普遍的な真理だ。


笑いたければ笑え、僕は今あの子のために頑張る!そして次の坂は次の歩哨の子のために頑張る!


しかし無情にも次の歩哨はおっちゃんだった。そして次の歩哨も、次の次の歩哨もおっちゃんだった。
おかしい。去年はこんな事はなかったはずだ。少なくとも半分くらいは女子大生(想像)だった気がする。これも少子化の影響なのだろうか。こんなこっちゃ駄目だ。頑張れ日本!頑張れ玄葉少子化担当大臣!
だがこの時の僕に日本の将来を憂慮する余裕はなく、ただひたすらに回らなくなる足と格闘していた。たぶんもう限界は越えていた。


後ろからバイクのエンジン音がせまってくる。


なんてこった。もう別のクラスに追いつかれたというのか。失意の中左に寄ると、右側を二両編成のトレインが追い越していった。ちらりと見えたゼッケンはしかし、エキスパートクラスのものだった。その時は知るよしもないのだけれど、この時トレインを引いていたのは昨年の40代クラスの覇者Sさん。僕と同様に今年はエキスパートクラスにエントリーしていたのだ。僕は去年この方に総合タイム、コンマ何秒かで負けている。恐るべき事に自転車の世界では39才以下より40才以上の方が選手の層が厚いのだ。やっぱり日本の未来は明るいかもしれない。


ともかく同じエキスパートクラスとわかった瞬間、僕はそのトレインに飛び乗った。とたんに速度が戻る。そして自分がどんだけタレていたのかを知る。仕切り直しだ。
もう一方は竹芝ジャージの方。この人も速そうだ。


飛び乗ったはいいものの、とてもローテを回す余裕などない。ただひたすらにしがみつく。
やがて前方に不動峠最後の壁、10%の看板が現れる。
路肩から声援が飛び、いやがうえでも力が入る。力が入りすぎて若干ホイールが空転する。ここで少しSさんから遅れてしまう。
不動峠入り口でスタートしたストップウォッチのタイムは11分37秒。昨年より2秒程しか悪くなっていない。結構いいタイムのはずだ。それでも先頭集団には着いていけなかった。おそらく先頭は10分台。恐ろしい速さだ。

つまり、これで置いていかれるという事が、エキスパートクラスに参戦している事の証だった。望むところだ。


舞台はいよいよアップダウンが繰り返すスカイラインに移る。僕はひたすら歩哨の子がかわいい事を願いつつ、ペダルを踏みしめていった。


[つづく]




自転車部門で16位

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