ツールドつくば2011 レースまでのレース

ツールドつくば当日。
体重計が示した値、70.4kg,19.3%。まだ実に13.5kgもの脂肪を抱えてはいるが、とにもかくにも体重は落ちた。
70kg台という体重は、今の身長になってから、つまり高校2年の頃から思い返してみても最低だ。しんどい部活でしごかれていた時もここまで落としたことはない。


よくやった自分。
思えば長くつらい日々だった。


だいたい年がら年中独身女性のように、あるいは気持ちだけは正しいヒルクライマーのように、ダイエットを意識している僕だけど、事情によりツールド草津DNSして以来、なんだか目標を失った感じになっていた。
気がつくと毎晩晩酌をしていた。


人によっては、ある程度の運動さえしていれば、自分の心の向くままカロリーを摂取しても太らない、ということもあるようだけど、残念ながら僕はそういう星の元には生まれつかなかった。


運動しても痩せない。むしろ太る。運動が脂肪を呼び寄せる。
体の防衛本能が、運動で消費した以上のカロリーを摂取することを要求する。
それが、すごく強烈な欲求として表れる。
あまりに強力すぎるので、ほとんど逆らえない。抵抗は無意味とさえ思える。
当然だ。食は人間の本能に根ざす欲求だからだ。 


そんなわけで僕は、毎日50km走って1000kcalほど消費しては、毎晩お酒とつまみから、それを上回るカロリーを取得する毎日を送っていた。体重が75kgを切ることはほとんど無かった。ツールドつくばにも申し込んではいたけど、きっと「参加した」以上の意味はないものになるだろうと諦めていた。



そんな時、茨城から都内までの長距離自転車通勤仲間である、ちょびんさんから声をかけられた。
一緒にダイエットしませんか?と。
この方は片道自走、片道輪行な私と違い、往復自走している。
だが、それでも痩せられない。運動だけでは痩せられない、私と同じ体質の方だ。


これだ、と思った。
独りでは耐えられなくても、二人なら頑張れるかもしれない。
そんなわけで、忘れもしない雨降る5月11日、平日だというのに思いの他混んでいる守谷駅前の居酒屋で、ダイエット開始の狼煙をあげたのだった。


長くダイエットをやった経験から、ひとつだけ言えることがある。
それは、ダイエットに必勝パターンはない、ということだ。
例えば「***を食べるだけダイエット」というのが世の中にはある。
大抵駄目なダイエット方法として紹介される事が多い。
でも、本当に駄目なのだろうか?


僕は思う。その方法で痩せ、そして痩せた状態を維持している人はきっと居るだろう、と。
ただそれは、ほんの一握り、その方法を実践した人数の数万分の一、ひょっとしたら数人だけなんじゃないかと思う。


Aさんが成功したダイエット方法で、Bさんも痩せよう、と思うのがそもそもの間違いなのだ。
Bさんどころか、CさんもDさんもZさんだろうが、きっと成功しない。
ZさんにはZさんの痩せ方があるのだ。


そんなわけで、僕は過去に一度だけ成功し、僕が痩せるなら、これしかないだろう、というダイエット方法をひっぱり出すことにした。
簡単に言えば、夜食べない飲まない運動だけするダイエットだ。


朝はがっつり食べる。もうお腹が痛くなるんじゃないかというくらい食べる。
だけどそのくらい食べると、夜食べなくてもなんとか持つ。


昼は自分で詰めた弁当だけ。結構小さい。
過去に一般的な成人男子向けと思われる弁当箱を使ったこともあるが、ご飯がたっぷり入りすぎて太るので、やめた。一日中体を動かす肉体労働系ならば大丈夫なのかもしれないが、所詮50km程度の自転車通勤者にはでかすぎる。


おやつは食べないか、食べても300kcalくらいに抑える。
おかしは大好きなのでこれは僕にとって非常にしんどい。
ぽてち一袋も食べられない。菓子パンも無理。
また人工甘味料でカロリーを抑えているゼリーやドリンクもあるが、経験上なぜか太るのでそれもやめた。我ながら不思議だ。人工甘味料を全否定する気は無いが、僕には合わないかもしれない。


色々試行錯誤して、行き着いたのがブドウ糖タブレット
僕はよくこれをなめている。一袋で300kcalくらいで、半日くらい舐めていられるので良い。口の中になにかが入っていると少し安心できる。


帰ったら食べない。絶対食べない。
僕は適量を食べる、ということができない。一旦食べだしたら満足するまで食べまくる。
酒も一緒。だからほどほどに食べるより、食べないほうが僕にとっては簡単なのだ。
だけどまったく飲まないのは巨大なストレスになるので、土曜だけは飲むことにした。
結果として、平日ちまちまと痩せた分が、土曜だけであっさりリバウンドすることも多々あったが、全体としては徐々に痩せていく傾向になった。


どうしても食べたい時は、目の前に昨年どうしてもついて行けなかった、サトーさんの後ろ姿を思い浮かべた。
徐々に離れていくケツ。踏めない足。重い体。


くっそ、もう少し痩せていれば・・・!


屈辱が食欲を上回ると、なんとか我慢することができる。


お腹が減って眠れない夜もあった。ほんの少しだけアルコールを飲めば眠れるだろう・・・すごく甘美な誘いだった。でもあのほんの少しずつ離れていく尻を思い浮かべながら耐えた。もうあんな思いをするのは絶対嫌だった。



人間の体はよくできているもので、多少食べなかったからと言ってすぐには体重は落ちない。恒常性というやつだ。だけどこれがダイエットにはきつい。頑張っているのに1週間くらい体重が落ちない時がある。すると諦めたくなる。
そんな時はちょびんさんの日記を見た。同じように落ちない体重に苦しめられていた。
苦しいのは僕だけじゃない。もう少し頑張ろう、と思えた。


こんな思いをしながら、レース一週間前に73kg台まで辿り着いた。約一ヶ月で3kg落ちている。ヒルクライマーとしてはまだまだ重いが、幸いにして、ツールドつくばのコースはダウンヒルを含む複雑なコースだ。純粋なクライマーにはおそらく厳しく、僕のような重量級でもひょっとしたら勝機があるかもしれない。
あとはこの体重を維持したまま、レース本番に臨もうと思った。


ところが、ここからぐんぐんと体重が落ちる。一週間で2kgちょい落ち、結果的に70kg台になった。見かけは軽いが、体脂肪は減っていない。なにかもっと別のものが落ちている。ヒルクライムにおいて軽さは正義だが、坂道を登るパワーを生み出している筋肉を落としては本末転倒だ。登れなくなってしまう。そもそも1ヶ月で5kgは落としすぎだ。


とにかく下がったものは仕方がない。もう走るしかない。
もうここはレースのスタートライン。隣には勝手にライバル認定しているサトーさんが並んでいる。3年負けつづけているけど。
一番反対のサイドには昨年優勝されたミポさんが並んでいた。昨年は開始5分で切れた。今年はどこまでついていけるだろうか。
後ろを振り向くと、Twitter繋がりの @O2maさんも居る。僕より明らかにヒルクライム体形で、しかも若い。若いといえば、今年のエキスパートクラスには高校生がたくさんエントリーしている。OTRの練習会によく参加しているN君情報によれば、超速いらしい。
そしてOTRつくば店に移動された、K山店長。出力は同じで、僕より10kg近く軽い。
普通に考えたらヒルクライムでは絶対についていけない。


よっしーさんやタケイさんが居ないのは残念だが、今年も随分役者が揃ったものだ。
まあスーパーサイヤ人な方々には絶対ついていけないので、少しでも一緒に走ってみたい、というミーハー根性なんだけれども。


スタートまであと1分とアナウンスされる。隣で応援の小さな男の子が
「ごじゅうきゅう、ごじゅうはち・・」
とかわいい声でカウントしている。
なんだかその声を聞いているうちに緊張と心拍が高まってくる。


もう少しだ。
もう少しで、僕の努力がどれほどのものだったのか明らかになるのだ。
僕はハンドルバーに伏せ、トップチューブに座りながら、その一瞬を待っていた。





71.5kg (前回計測から +1.1kg 勝負開始から - 4.4kg)
18.6%

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