ツールドつくば2011 あと2分。あと5キロ。

「パン」
軽い号砲とともにエキスパートクラススタート。
不動峠の入り口へ向かって、各自ゆるゆるとペダルを踏み始める。
このクラスは総勢20名弱なので、他のクラスより全然少ない。だから、集団と言ってもそれほど神経質になることなく走ることができる。スピードは控えめな印象。重量級としてはタイムを稼ぐならここだが、さほど道幅あるわけでも無いので自重。


しばらくして不動の入り口。
ガチョン、ガチョンとフロントをインナーに落とす音を響かせながら十数名の集団が入り口の付近の激坂を登る。とにかくミポさんだ。この人が飛ばせば集団も速度を上げるだろう。しかし、そうはならなかった。
独りでTTに来た時よりも低いパワーで峠を黙々と登る集団。
ミポさんは様子見なのだろうか。高校生が抜け出して集団前方を走っているが、それもさほどペースは上げていない。


僕はどうするべきなんだ。
どうせ20km程度の速度では集団走行のメリットは低い。自分が耐えられる限界ギリギリの出力まで上げて行ってしまうべきか、このまま機会を待つべきか・・・・。
逃げたとしても、後で追いつかれるだろうが、スカイラインの入り口まで逃げきれれば少しは勝機が見える。風返し峠まではダンゴになるだろうからだ。一番怖いのは、スカイラインの入り口に辿り着くまでに置いていかれることだ。その場合、先頭が集団ならもう追いつくことはできないだろう。


もんもんとしたが、結局は飛び出さなかった。
ミポさんやサトーさんはどう考えても温存しているだけだろう。そうすると、飛び出すのは単に集団の速度を上げるだけになりかねない。上げるだけ上げて、自分が切れたらアホすぎる。それよりもこのまま速度控え目のまま不動峠を抜けることができるなら、それが一番いい。


しばらくサトーさんのツキイチで不動の坂を登る。
半ばは過ぎていただろうか。先頭の高校生を吸収し、さすがにちょっとじれてきたのかミポさんのペースが上がる。サトーさんが、ミポさんからちょっとだけ離れる。
あ、これはいけない、と思い前に出た。
1分くらいかけてなんとかミポさんに連結する。
ところが、ここでミポさんからまさかの先頭交代サイン。
思わず
「無理ッス!」
と言ってしまう。
ミポさんはあきれたような感じだった。まあずっとツキイチで走ってたのに、前をひかないというんだから当然だろう。

後ろから
「ちょっとだけなら・・・」
と言いつつサトーさんが前に出て先頭を牽く。
全然余裕そうだ。
ここであまりに僕と他の人の余力に差がある事に気がついた。ペースは相変わらずさほど速いわけではない。おそらく不動を12分スレスレくらいだったのではないか。今一緒に走っている人達はおそらく10分台で不動を登る実力の人達ばかりだ。
当然かなりの余力を残している。なのにメチャクチャ消耗している自分。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。


遂に目の前に10%の標識が表れる。
僕にとっては審判の坂だ。ここさえ集団で抜けられれば、また回復するチャンスをもらえる。もし脱落すれば・・・ここまでだ。


斜度が急になる。
ファイナルローに入れる。
立ち漕ぎする。


そして、集団が僕の右側をパスして行く。


どうしてそうなったのかはわからない。急激に落としすぎた体重がここで響いたのかもしれない。いや、ただ実力が足りなかったのだろう。
だから、ただ、着いていけなかっただけなのだろう。


現実は残酷だった。
じわじわ離されるというものじゃなかった。あっさりときっぱりと6名程の集団は僕を置いて行った。あっという間にスカイラインへ続くカーブの先に見えなくなった。
おそらくスカイラインまであと20メートルもなかっただろう。
レースが終わった。
ミポさんもサトーさんもN君もK山店長も行ってしまった。





いやまて。まだ終わっていない。
ゴールにはまだ着いていない。まだ去年の自分に勝っていない。


スカイラインに出る。
視界の先に先頭集団が見えるが、残念ながら追いつくことはないだろう。
自分より力が勝る人ばかりの集団に、個人の力で追いつけるわけがない。


先頭集団は行ってしまったが、これでもまだエキスパートクラスの真ん中あたりのはずだ。アップダウンを繰り返すスカイラインは集団で走ったほうが絶対に有利だ。もし後続がすぐ後ろに居るなら合流してしまったほうが良い。
しかしチラリと振り返るも、姿は無し。完全に孤立してしまったようだ。
仕方が無い。できる限り姿勢を低くし最初の下りに飛び込んだ。


一つ、二つ、三つ、四つ・・・順調に登り返しを越えて行く。ただ単独だから足を使わない、という訳にはいかない。徐々に消耗していく。
先頭集団は早い段階で見えなくなった。その代わり後ろから自転車特有の薄い金属が擦れるようなノイズが聞こえてくる。どうやら追いつかれたようだ。
どうせ追いつかれるなら早いほうがいい。無駄な抵抗はせず合流する。
追いついてきたのは高校生の二人組だった。
なんとなく雰囲気では後輩が先輩を牽いているようだ。ついでに僕も牽いてもらう。
あんまり牽いてもらってばかりでは悪いので、風返し峠に入るところでは前に出る。
ゆるい下りで、こんなところだけは重量級が有利だ。
しかし程なくして最後の登りに入るとあっさり先頭を譲ることになる。
もう余力は無い。全然無い。


ループ坂を越え、最後の登りに入る。
わかってる。ここが勝負所だ。ここからレースが終わるまで、あと数分だ。
出し切るならここしかない。


しかし、道半ばで高校生の尻が徐々に離れていった。1年前のサトーさんのそれと重なる。
ゆっくりと、でも絶対的な速度差を持って離れていった。
これはもう精神力の問題だったと思う。スピードはもうまったく出ていなかった。
ここで力を絞りきれない自分が心底嫌になる。


最後の直線はとにかくしんどかった。レースにも自分にも負けた感が一杯だったが、まだつらい時間は終わっていない。コース脇からの声援が胸にしみる。せめて最後まで頑張らねば。手を、足を抜いちゃいけない。
スピードが出ていなかったのでほとんど意味はなかったけれど、フロントをアウターにかけて自転車を左右に振りながら、ゴールに飛び込んだ。


こうして、30分程度の短くて長い、そしてつらくて楽しいお祭りの時間が終わった。
トップのゴールから時間にして2分、体重にしておそらく5kg程の、それは極めて順当な差だった。

            1. +


ゴール後、ちょっとだけミポさんと話せた。
実業団レースが同日開催だけに、有名所はみんなそっちに行ってしまうのが普通だろうが、3年連続でこのレースに参加してくれている事にお礼が言いたかった。
やっぱりスーパーサイヤ人レベルの人も参加しないとなんだか盛り上がらない。
その事を伝えると、本人は、こっちが近いから・・・なんて笑って言ってたけど、本当かな?でも嬉しかった。来年もぜひ!とレースの関係者でもないのにお願いしてしまった。


店長、N君、サトーさんとも話した。やっぱり最後まで先頭は集団でスプリント勝負になったようだった。店長のブログによれば、僕がヘタれて高校生から切れたあたりからアタックがかかったみたいなので、どっちにしろ勝負にならなかったろうけど。


N君は限りなく3位に近い4位。惜しい。ていうかいつの間にこんなに山に強くなったんだ。
去年は36分くらいだったと思うけど。これが若さというやつか。恐るべき高校2年。
本当にツールいっちゃうかもしれないな、これは。


サトーさんともたくさん話した。会うのは1年に1度だけだというのに、なんだか全然そんな気がしない。勝手に練習中にライバルと想定して、その尻を追いかけていたからかな。
この人は純粋なクライマーなので、今日みたいなレース展開は苦手だったようだ。スプリント勝負で6位になっちゃったようだけど、不動がハイスピードバトルになっていたら、きっと違った結果になっていただろう。
それにしても三年連続完敗で、しかもタイムは徐々に離れていってしまっている。
勝手にライバル認定しているのが恥ずかしくなるくらいだ。
また1年間、この人の尻の幻を追いかけねば。
赤城山に応募したらしいので、出来れば僕もそれに出たい。もう一度勝負したい。


このブログによくコメントして頂いているka2さんにも声をかけて頂いた。
すごく気さくな方だった。まだロードに乗り初めて一年程で、その一年でものすごく痩せたらしい。いいなぁ。僕も痩せたい。超痩せたい。


いつもだ。
いつもレースで山の登っている時には回りの全てを呪いたくなるくらいにつらくてしんどくて逃げ出したいと思うのに、終わってしまうと、あーすればよかった、こーすればよかった、もう一度走りたい、と思ってしまう。


今年の敗因はずばり体重だろう。直前に落とした分は本当にまったく意味がなかった。むしろ害だったかもしれない。
やはり時間をかけてきっちりと脂肪だけを落とさねば意味がないのだ。


もし赤城山に出られるとすれば、準備期間は3ヶ月。ちゃんと切れずにダイエットできれば脂肪を5kg落とせるかもしれない。
レースは楽しい。練習結果、ダイエット結果がちゃんとタイムとして表れる。
今回は残念な結果だったけど、また次の目標に向かって頑張ろう、と思える。


だから、今日だけは、乾杯!


結果:
エキスパートクラス 9位
タイム: 30:53.190




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自転車部門で9位

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