2013 もてぎエンデューロ7時間ソロ参戦記 中盤

時計は14:00頃を指している。
スタート時に東の空に輝いていた太陽は、ハムスターの如く定められた周回路をぐるぐる回る僕らの上を通り過ぎ、いまや西の空へとかかっている。


未だ僕は先頭集団にしがみついていた。
攣りは相変わらずだが、どうにか仲良く付き合っている。


ボトルの水は2本とも飲みきったが、ありがたいことにシクロさんが運んでくれ、未だ1本分ある。補給食はエナジーバーもようかんもジェルもほぼ食べつくした。こうなると、スタート時に思いつきで右のバックポケットに放り込んでおいたウィダーゼリーの存在がとても心強い。
どうにか持つだろうか。あと2時間だ。


4時間組がコース上から消えあたりから、明らかに集団が薄くなった。
こうなると集団の後ろ側は中切れの危険が出てくるので、足を消耗するのを承知で前方へ移動するしかない。
漫然とブリッツェンの赤ジャージの後ろについていると、いつの間にか集団の最前線に送り込まれていた事もあった。
先頭に出る前にひっそりと引き下がる手もあったが、これも経験だと思い、そのまま先頭を引き受ける。極力速度は維持。上げない。下げない。



いち、に、さん・・・・


10まで数えて、右手をさっと差し出し先頭を譲る。
ペダルを止めて、後ろを振り返りながら集団を後ろまで下がる。


なんというか、はしごを降りるみたいだ。
1列縦隊で構成されたロードバイクの柱を、重力代わりの風圧に押し戻されながら、一歩々々下る。
ペダルを止め集団をぐるりと眺め回すとまだまだたくさん居る事がわかる。むしろ周回遅れを吸収して一時期より増えているのかもしれない。
程良く層が厚くなった所まで降りて、端に加えてもらう。
これで当面お役目終了だ。


こんな感じの先頭交代を4,5回やったと思う。
例のごとく振り返ると誰もついてきていない時もあった。速度は変えてないはずなんだが。ひょっとして様子見のために泳がされるなどということがあるのだろうか。
登り坂の中盤で、先頭交代を促したとたん、カウンターよろしくアタックされた事もあった。
牽いた直後でついていけるわけもない。
なすすべもなく見送り、周りを見渡すと、まこちんさんも、ミポさんも、チーム強豪の黒澤軍団も集団に居る。これならいずれ逃げは潰されるだろうと、他力本願で集団の中に沈み込む。
実際、何度もアタックがあったが、2周以内には吸収されていたと思う。


レース前に心配していたトイレは、どうやら大丈夫なようだ。
全ての水分は汗の形で排出されているのだろう。
事前になめるように読んだ、六本木さんのブログでは、レース中に用を足して独走で集団に復帰する様が書かれていたので、やればできるかも、と思っていたがとんでもない。
集団から10m離れれば、もはや僕の足では復帰は不可能だ。
今わかった。同じ人間ではない。間違いない。


レース序盤で、@CB_178さんに声をかけてもらったのは嬉しかった。
めっきり更新減ったブログも読んでくれているそうだ。恥ずかしい。もう少し頑張って更新せねば。


こちらからはミポさんに声をかけてみた。
感触を聞くと「おなかが痛い..」との事だった。
僕ごときに三味線引くとは思えないので、終盤になればなるほどミポさんやまこっちさんが集団を牽く事が多くなっていた事を考えると、お腹が痛くてようやく僕レベルと勝負になるということだろう。まこっちさんに至っては骨折していたようだし。
マチュアにも厳然とした壁が存在する。
子育てが終わって本気でトレーニングできるようになれば、ひょっとしてその壁を超えることができるのだろうか。しかしそれは年齢との戦いでもある。
確実に言えることは、今の自分が一番若い、ということだ。
今の今、置かれたこの状況でベストを尽くすしか無い。


気がつけば15時が近い。レース終了まで後一時間。
一周7分弱で走っている事を考えれば、残りは多くても後10周程度。
ようやくここまで来た。
心肺はそれほどきついと思わないが、足はもうボロボロだ。始終あちこち攣りまくっておりあと10周持つのかまったくわからない。登り坂でも攣りだしており、最早安息の地は消えた。ソロの誰かが逃げたとしたら絶対追う事はできないだろう。
逃げる力がある者は居るのだろうか。


それにしても時計の進みが遅い。かたつむりの方がまだましだ。


最後の瞬間までどうにか先頭集団に居たい。
ただその思いだけを胸に、僕はひたすらペダルを踏んでいた。


[続く]



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